『片羽の蝶』の伊黒小芭内が甘露寺蜜璃を心配する話(ネタバレあり) ③

鬼滅の刃
鬼滅の刃 吾峠呼世晴/集英社より引用

甘露寺蜜璃の様子がいつもと違うことで伊黒小芭内から相談を受けた胡蝶しのぶは、甘露寺蜜璃から話を聞こうと蝶屋敷に呼びます。

甘露寺蜜璃が蝶屋敷に向かう途中で、以前鬼から助けた男の子に出会います。

その男の子が「ずっと探していた!」と。驚く甘露寺蜜璃。。。。

また、漫画村のようなサイトやzip、rar、pdfで問題なく読めるのかどうかもお伝えしています。

第3話「甘露寺蜜璃の隠し事」あらすじ③

甘露寺蜜璃が助けた少年に助けられる?

「はああ~」

蜜璃を悩ませる不調は収まるどころか、日に日に増大していた。

なんだか無性に息苦しく、体が鉛のように重い。

そのせいだろうか。

恋の呼吸が上手く使えない。

明らかに弱くなっている。

私、、、本当にどうしちゃったんだろう。

こんな状態で、柱としてやっていけるのだろうか。

 

挙句、情けない思いでいっぱいになっているところに、しのぶから伝言が届いたのだ。

「甘露寺さんの都合のつく時で良いので、蝶屋敷へ寄ってくれませんか」

いつもであればうれしいはずのその誘いが、蜜璃を更に悩ませた。

(何の用なのかしら?しのぶちゃん)

今、会うのは気まずい。だが、まさか、無視もできない。

蜜璃が世にも重い足取りで蝶屋敷に向かっていると、背後で「あ!」という声が聞こえた。

 

「鬼狩りの、、、姉ちゃん?」

戸惑うような声に振り返ると、

「そうだ。やっぱり、姉ちゃんだ!」

そこには、以前、母親とともに鬼に襲われているところを救った少年が立っていた。

よく日に灼けた顔がうれしそうな笑顔を作る。

「よかった。おいら、姉ちゃんのことずっと探してたんだ」

「私を?」

蜜璃が目を瞬かせる。

「なあに?相談事?困ったことでもあるの?」

「・・・・・・・」

すると、少年が急に周囲を気にするような素振りをした。

そして、声を落とすと、

「実は、母ちゃんの働いている料理屋がこの近くなんだ」

そう告げた。

どうやら、母親に知られたくない話があるらしい。

「母ちゃんに聞かれると、うるせえから」

ほんの子どもが、いっぱしの男のような口を利く。

「まぁ・・・」

蜜璃が笑いを噛み殺しながら、それだったらと、ちょっと離れたところにある行きつけの茶屋の一つに連れて行く。

 

茶屋の店先に並んで座ると、少年はうれしそうに団子を頬張った。

「元気だった?大きくなったわねぇ。背もすごい伸びたみたい」

「あの頃から、もう五寸は伸びたよ」

「五寸も。男の子は大きくなるのが早いわねぇ」

蜜璃はにこにこと微笑んだ。

蜜璃にもちょうどこのくらいの弟がいる。

ついつい、弟を見るような目で見てしまう。

「それで?私にお話ってなあに?」

少年はごくりと団子を飲み込むと、おもむろに口を開いた。

 

「おいらさぁ、大工になりたいんだ」

「あら、いいわねぇ。物作りが得意なの?」

「まあね。死んだ父ちゃんが大工だったから」

「まぁ、、、」

蜜璃が返す言葉に迷う。

すると、少年の方で「父ちゃんが死んだのはもう3年も前の話だから」と気をまわしてくれた。

少年の黒々とした目が空を見据える。

「橋を架けてる時に川に流されて死んじまったんだ。腕の良い大工だったんだけど、泳ぎはあんま上手くなくて」

「・・・そうだったの」

蜜璃は下唇を軽く噛んで少年の、日に灼けた顔を見つめた。

鬼から救った時、息子を抱きかかえ大粒の涙を流していた母親の姿が、しきりに思い出された。

今にも額ずかんばかりに、何度も何度も頭を下げていた。

「息子を助けてくださって、ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました。」

父親の件を聞かされた今では、その思いがなんとも切ない。

「そんなことがあるから、母ちゃんはおいらを大工にしたくないんだ。父ちゃんのこと嫌でも思い出すから。出来れば、小間物屋とか呉服屋とかに奉公に出てほしいって、、、でもおいらは小間物屋や呉服屋になりたいわけじゃない。大工になりたいんだ」

少年は利き手をぐっと握りしめると、だから、と続けた。

「母ちゃんには内緒で、父ちゃんの知り合いの親方のところに弟子入りするんだ。もう話もついてる」

「・・・・どうして、私にそれを教えてくれるの?」

蜜璃が戸惑って尋ねると、少年は少しだけ口ごもった後で、ひどくぶっきらぼうに答えた。

「だって、おいらや母ちゃんを助けてくれた時の姉ちゃん、すげえ、かっこよかったから」

「え、、、」

蜜璃が余計に戸惑う。

あの頃の自分はまだ入隊したばかりの平隊士で、力だけはあったが決して強くはなかった。

無茶苦茶に斬りつけ、ようやく鬼の頸を叩き斬ったような状態だ。

とにかく必死だった。

お世辞にもかっこよくはなかったはずだ。

「だって私まだ、あの時、まだ全然強くなかったのよ?ものすごくみっともない勝ち方しか出来なかったし、、、ちっとも、かっこよくなんて、、、」

「かっこよかったよ!!」

蜜璃の言葉を遮って少年が叫ぶ。

「赤の他人のおいらたちのために、一生懸命戦ってくれて。女の人なのに、あんなボロボロになってまで戦ってくれて、、、姉ちゃんはだれよりもかっこよかった」

少年の真っ直ぐな言葉が、蜜璃の胸に突き刺さる。

興奮のせいか、少年の耳たぶは夕焼けのように赤く染まっていた。

「そんな姉ちゃんを見て思ったんだ。おいらもこんな風になりたい。自分が本当にやりたいことで誰かの役に立ちたい。諦めたりとか、後悔とかしたくないんだ。だから、どんなに母ちゃんが泣いても、おいらは大工になる。父ちゃんよりすげえ橋を作ってみせる」

「・・・・・・・」

「姉ちゃんにだけは伝えときたかったんだ。だから、ずっと探してた。じゃあ。団子ごちそうさま」

そう言うと、少年は逃げるように走り去ってしまった。

それこそ、呼び止める暇もなかった。

少年の背がどんどん小さくなって、やがて人込みに消えていく。

「・・・・・・・・」

少年の消えた街を、蜜璃はただ呆然と見つめた、、、。

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